クララとお日さま

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『クララとお日さま』を読んだので、書評というほどではありませんが感想を書きたいと思います。

基本的に何かの感想はネタバレしないように心がけて書く心づもりですが、何らかの示唆は与えてしまう可能性のあることをご了承願います。

作品の作者は2017年にノーベル文学賞を受賞されたカズオ・イシグロさんです。

同じ作者の作品ではある執事の半生(?)を描いた『日の名残り』を読んだことがありました。

執事が自分の人生について、その時々で何を考えてどう行動したかを振り返って語りかけてくるような書き方がされた本でした。

『クララとお日さま』もそのスタイルで書かれていて、始めの方は「このまままったりと進んでいくのかなあ」と漠然と思いながら読み進めていきました。

作中で、その世界では(あるいは特定の登場人物にとって)当たり前の概念として「AF」「向上処置」「ボックス」という用語が出てきます。

これらは、どこかで詳しく説明されるのかと思いきや、説明されないまま話が進んでいきます。

読者は、これらが意味するところを想像しながら読み進めていくことになります。

主人公のクララの見た目も全く描写がなく、姿かたちをどう想像するかは読者に委ねられています。

最近漫画を読むことが多いのですが、漫画だと絵がある分、「描かざるを得ない」ものがたくさんあります。あえて「描かないで読者の想像に委ねる」ことができるのは文学作品の魅力の一つであると思いました。

ある程度の長さがある長編小説なので、序盤は途中で飽きてしまうかもしれないなと不安も感じつつ読みました。

ところが、中盤以降は思ったよりも大きな展開があって、どんどん読み進めていけるようになりました。

そして、ある地点に達したとき、改めて序盤の会話で出てきた台詞を思い出すと、そのときは文字通りに表面的に理解したつもりになっていたのが、実はもっと具体的で深い意味があったのだと気がつきました。

もちろんここで結末は書かないのですが、途中で想像していたのとは違ったものでした。何も特別なものは隠されていないように感じさせておきながら、しっかりと伏線を仕込まれていたというような、後から「あそこはこうだったのか」というように振り返りたくなる作品でした。

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