以前、ショパンの映画を観て、面白かったのですが、史実にどのくらい基づいているのかは疑わしかったという感想を書きました↓
そこで、伝記のような本にいくつかあたってみようと思い、実際に2冊読んでみました。
1冊は、『図説 ショパン』という本です。伊熊よし子さん著で、ショパン生誕200周年である2010年に発行されました。
前半はショパンの一生を追う内容なのですが、後半はショパンコンクールを解説しているところが珍しいと思います。
カラー写真がふんだんに使われていて、ショパンが生きていたころの写真というのはもちろんほとんど残っていないので現在の写真にはなるのですが、ショパンゆかりの地を写真で見れるというのは、自分が現地を訪れたかのような感覚になりました。
ショパンはパリで引っ越しを繰り返したそうなのですが、その一覧が大きな見開きの地図で紹介されているのも分かりやすくて良かったです。
印象に残ったのは、ショパンが幼い頃から完成度の高い曲を作っていたのだということ。7歳のときに作曲した《ポロネーズ ト短調》が批評誌で絶賛されたり、11歳のときにはピアノの恩師ジヴニーのために《ポロネーズ 変イ長調》を作曲して贈っていたりと、想像以上に早熟な天才であったのだと分かりました。
後半のショパンコンクールの解説も面白くて、過去に活躍した出場者がたくさん紹介されています。ショパンの演奏家を探す際には、一つの指標になるのではないでしょうか。
続いてもう一冊が、平野啓一郎さん著の『ショパンを嗜む』という本です。こちらは2013年に出版されています(あとがきによれば、意図的に200周年を避けたとのこと)。
同じ筆者がショパン、および同時代の画家ドラクロワを主人公とした小説『葬送』を書いた際のノートに基いて書かれたそうですが、単体でも十分楽しむことができました。
取材で実際に感じたことや、複数の説がある部分を小説ではどのようにしたかなど、主観的なことと客観的なことが両方とも書かれているのが興味深かったです。
もちろん『葬送』の副読本的役割もあるので、『葬送』を読んだことのない私は大いに読んでみたくなりました。
ショパンがパリで最後に行ったコンサートというのがあったですが、そのときに弾かれた曲が確定されていないのだそうです。なんでも、プログラムには「ノクターン」「エチュード」というように作品番号まで書かれていなかったのだとか。
それを筆者が予想して、それぞれの曲を選んだであろう根拠も詳しく書かれているので大変面白かったです(選曲がCDにもなっていて、そのライナーノートの写しが掲載されていました)。
本なので音は出てこないわけですが、ショパンの弟子とのやり取りなど、いろいろなストーリーを読んでいるうちに、ショパンの出していた音はこんなだったのだろうかと想像力が掻き立てられました。
次は『葬送』を読んでみたいです。