クララ・シューマンの伝記を読んだ感想を書くのですが、本を読むきっかけとなった映画について簡単に触れておきます。
クララシューマンの映画
以前にこちらの記事で、クララ・シューマンに関する映画『愛の調べ』の感想を書いています↓
この映画が、伝記を読んでみたいと思ったきっかけです。一緒に観たショパンの映画と比べるとできるだけ人物を忠実に再現しようという姿勢が感じられる映画ではあったのですが(ショパンのものも、シューマンのものも映画作品としては素晴らしく感動しました)、それでも限られた時間内で観客を満足させるストーリーに仕立てなければならないのですから、多少の脚色は免れないのでしょう。
見た後でほかの方の感想を検索してみると、やはり史実と異なるところはあるようでした。
私としては、物語として楽しむだけではなく、実際の姿を通してクララやシューマンの芸術性がどのようにして生み出されたのかを少しでも理解したいと思い、伝記にあたってみたいと思いました。
なお、この記事を見せた友人から、主人公はクララではないのではないかという指摘を受けました。確かに、ロバートとクララの結婚生活を描いているのでクララ一人を主人公というのは無理があったかもしれません。
映画を見た目的も、クララについて知りたかったというよりは、現在も作曲家として親しまれている夫のシューマン(ロバート)について知るのが主でした。
しかし、ロバートが入院したり、先に亡くなってしまったりすることから、クララを中心に描かれている部分も多く、当時の自分の感じた(クララが主人公であるという)印象をあえて書き換える必要もなかろうということで、そのままにしています。
クララシューマンが描かれた本
『真実なる女性 クララ・シューマン』は、私が読んだものは「みすず書房」から2019年に復刻出版されたものなのですが、もとは1941年に第一書房から出版された古い本です。みすず書房のものは、仮名遣いを現代のものに直して読みやすくなっています。
原田光子さんが書かれているのですが、無味乾燥な書き味ではなく、小説として面白く読み進められる文体です。
クララ・シューマンを中心に描かれていますが、父ヴィークをはじめ、夫のロベルト・シューマンはもちろん、同居して家族のようにしてすごしたブラームスなど、周辺の人物像もありありと浮かび上がってきます。
クララのみならず、当時の社交界の雰囲気を知る上でも大変貴重な日本語資料であると思います。
膨大な一次資料(登場人物本人が書いた書簡など)に基づいて書かれています。クララは書簡をたくさん遺しており、日記も書いていたのは幸いなことでした。